形状記憶ポリマー

エネルギー散逸特性

Tg=318K(45℃)のエーテル系形状記憶ポリマーについて、動的粘弾性試験の昇温過程で得られた損失正接tanδと温度との関係を下記の図に示す。この図は貯蔵弾性率G'の値も同時に示してある。この図からわかるように、tanδはTg付近の温度で急激に大きくなり、Tg=318K(45℃)では約1である。tanδはG''/G'(損失弾性率G''と貯蔵弾性率G'の比)で定義され、変形中に熱として散逸されるエネルギー量の目安となる。転移領域以外の温度では、分子鎖の運動性はほぼ均一であるためG'とG''の値は一定であり、その比であるtanδも一定である。転移領域では分子鎖がミクロブラウン運動を開始することによりG'は急激に下がり、tanδはピークを示す。特に本ポリマーでは、Tg領域が狭いために、tanδは大きい。

一方、転移領域でのtanδの値は人間の皮膚のtanδ約0.5に近い。したがって、応用において本ポリマーを手で触れる部分に利用すると、触れた場合に違和感が少ない。

貯蔵剛性率G'および損失正接tanδと温度との関係

貯蔵剛性率G'および損失正接tanδと温度との関係